~就活室便り~#17 空飛ぶじゅうたん・空飛ぶニット
こんにちは。就活室のHANAZONOです。寒くなり始めたら急速に寒くなり、冬支度は
急になりました。綿のトレーナーからウールのセーターへと主役は変わり、コート、
中綿の季節になりましたね。寒がりとはいいながら、寒いときに寒い、ということは
いろいろな面でとても良いことで、冬ならではのコーディネートを楽しみましょう。
ファッションビジネス的に言うと、実はアパレルが一番儲かるのは春と秋で、昨今その
季節が一番短くなった気がしてなりません。なんか冬と夏だけ、って感じですよね。当然、
アパレル各社もそれに対応して企画変更を余儀なくされます。ちょっと前まで半袖のTシャツ
なんて、冬には買えなかったんですけどね。逆に年間定番のような商品にワンチャンある
かもしれませんね。
ちなみに私は現在鎖骨骨折からの回復中で、完全回復するまでボタンのシャツやタイトな
ジャケットが着れず、Tシャツからの重ね着に冬では初挑戦中です。バックパックも背負えず、
お医者さんに、「とにかく、骨は折らないのが一番ですよ!」と言われた言葉が身に沁みます。
今後より寒くなると路面凍結とか、積雪とか滑りやすい状況が予想されます。みなさんも気を
つけてくださいね。
今回、産学連携実習という授業の一環で、両国の丸和繊維工業様に学生と共に工場見学に
お伺いしました。両国で66年の歴史を持つカットソー工場です。現在、都内に本社があっても
縫製をしている企業はごく稀で、東京本社は営業のみ、縫製作業は地方の工場で、という会社が
ほとんどですが、こちらではミシン40台、縫製スタッフ10名で実際に工場として運営されて
います。もちろんさらに大規模な工場が青森と福島にあるのですが、地方も人集めが大変に
なってきたことと、特にカットソーはデザイナーが直接工場とやり取りすることが多いため、
むしろ東京を拡大していく、とのことで、そのためのミシン40台という投資なんだろうと
思います。
この会社だけの特別な技術がありそれは「動体裁断」という技術です。この技術を考案した
機能系被服デザイナー、中澤愈教授の技術的指導を全面的に受け、試行錯誤を繰り返した末の
技術だそうです。
中澤愈さんはデザイナーでありながら、人体に最もフィットするパターンは皮膚である、
ということに注目し、どんな動きに対しても皮膚には窮屈感がないのは、皮膚のしわが絶妙な
伸び縮みをするからだ、という仮説を証明するため大学医学部に入学しなおし、その後実際に
解剖に明け暮れ、皮膚の研究をしたそうです。そうして、筋肉、血管の動きに対して皮膚が
どのような動きをするかを徹底的に研究されたそうです。著書には解剖して採取した皮膚の
図が多数載っているのですが、まさしくこれはパターンに対する執念としか言いようが
ありません。
写真をみていただいて(相変わらず見にくくてすいません)、講師の丸和繊維の深澤さんが
持っているシャツの脇に濃い紺のパーツがあるのがお判りでしょうか。これは脇裾から
手首までつながっているパーツで、このパーツを挿入すると皮膚と同様、つれることがなく
両手を上げることができます。ボトムにシャツの裾を入れ、両手を上げるとシャツの裾が
引っ張られてボトムから出てしまいます。動体裁断の理論に基づきこのパーツを入れた
シャツは裾が引張られることがなく、シャツがボトムから出てしまうことがありません。
普通こういう楽な動きを目指すと素材のストレッチ性に頼りがちですが、中澤教授によると
ストレッチ素材といえどもそれは皮膚と違い、ある程度の張力がかかるものなので実は疲労が
蓄積するのだそうです。普段はそこまで気づかないかもしれませんが、例えばオリンピックの
アスリートレベルだとものすごい差になるらしいです。
この動体裁断の技術を用い、最初に成功したのは実は宇宙においてでした。一度動いた物質は
いつまでも動き続ける、という宇宙空間において、手の動きにつれ裾が上がってしまうシャツは、
その裾の動きが止まらず上がり続け、いつの間にか勝手に脱げてしまうそうです。動体裁断で
作り上げたシャツは、そんな慣性の法則にとらわれず、裾が上がることなく、宇宙空間で
宇宙飛行士の作業に貢献しました。その時の飛行士が山崎直子さんです。テレビで彼女の
エンデバーの中での様子を見ていた方は多いと思いますが、確かに彼女のポロシャツが脱げる、
なんてことはなかったですね。
こんな動体裁断の技術を利用したシャツは、手を上下することの多い様々な職業の方に愛用
されているようです。指揮者、レーサー、バーテンダー、等々様々な職業の方の助けとなって
います。
また、着心地にこだわるデザイナー、ヨウジヤマモトさんとのコラボレーションでは丸和繊維
さんのオリジナルブランド(INDUSTYLE TOKYO)とヨウジヤマモトのダブルネームで商品を
開発、販売もしています。
空を飛ぶ話をもう一つ。日本で一番多い鈴木姓の方と車いす使用の方とはほぼ同数らしいのです。
鈴木姓の方ほどには車いすの方にお会いしませんが、それは車いすの方がそれほど外出がしにくい
ことと、外出にふさわしいおしゃれな服が見つからないことに要因があるようです。
丸和繊維さんはその動体裁断の技術を利用して車いすの方専用の「Flying Jeans」を開発しました。
写真ではわかりにくいかもしれませんが(次からもう少しうまく撮ります、すいません)、もうすでに、
座った形に曲がって作られているのがおわかりでしょうか。
車いす使用者の着心地、利便を徹底的に考え、シルエット、ポケットの位置、等を再構築し、
外出の機会が増えるよう、おしゃれで履きやすいジーンズを作り上げたのです。
山形のバリアフリープロジェクト“Gratitude”の代表、加藤さんは筋ジストロフィーの発症により、
32歳で自立歩行が困難になり、フル車いす生活を送られていますが、そんな状況に負けずに
バリアフリー活動をすすめ、その一環として車いすパラグライダーに挑戦、見事成功されました。
もちろんFlying Jeansは加藤さんと一緒に空を飛び、履き心地の良いかっこいいジーンズがその
活動の後押しになったことはご本人が語られている通り事実であります。スペースシャトルから
宇宙ステーションまで、宇宙を旅行し、車いすと共に空を飛ぶ、この両国の工場の技術を丸和繊維の
深澤さんは「リアル下町ロケット」とおっしゃっていましたが、空飛ぶじゅうたんというか
空飛ぶニットと呼びたいところですね。
以前にも申し上げた通り日本の衣料品の輸入浸透率は98.5%,日本での生産は1.5%しかありません。
しかしそこには世界に誇るべき技術が数多くあります。そんな技術を少しでも次代につなげていけ
たら、そんな思いは日に日に強くなります。確かに繊維縫製品で画期的な技術、革新的な技術はもう
生まれないかもしれません。でも夢を叶える、勇気を与えてくれる、気分を高揚させてくれる製品で
繊維衣料品以上の力を持つものって、そんなに多くないと思います。ましてや四季の移り変わりにつれ
一年で最低4回も新商品を発表する業界は他にはないのです。この魅力を今後も次世代にどんどん
アピールし続けていきたいと思います。
だいぶ予定をオーバーした気がしますが、そんな技術の一端を当学の学生にも親切丁寧に教えて
いただいている写真もご覧ください。
幾多の特殊ミシンに興奮しきりの学生たちでした。たとえ少しでもこういった日本の技術を引き継い
で言ってくれたらな、と思いつつ今後もできるだけこんな場を次世代に用意できたらな、と思います。
なんか今年一年早かったですね。来年もいろいろと紹介できたらと思います。
ではまた。
HANAZONO
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