~就活室便り~#14 3Dモデリングとハレルヤ
みなさんこんにちは。就活室のHANAZONOです。季節は少しずつ進み、と思っていたら
いつの間にかもう12月、今年も残すところあとわずかとなりました。わたし個人的には
とにかくいろんなことがあった激動の年だったのですが、みなさんはいかがだったで
しょうか。年が改まったからといってすべてが変わるわけではないので(わたしは今年は
見事に変わりましたが)、年末とか年始とかってあまり意識したことはないのですが、
昨日何の予備知識もなく、リリースされたばかりのショーン・メンデスの新譜を聴いて
みると、ラストナンバーでレナード・コーエンの「ハレルヤ」をカバーしていました。
この静かなメロディーと説教臭い歌詞で有名なこの曲(あくまでも私見です)を聞いて
いると、どうしてもクリスマスを意識しますね。なかなかキリスト教の信仰の話は
個人的に理解の及ばないところがありますが、なぜかクリスマスの意味だけは理解して
いる気になっています。みなさん、良いクリスマスになることを願っています。
さて、就活室便りですが、今回がジャパンクリエーション編第3弾になります。テキ
スタイルコンバーターはかなりの数の企業が縮小、撤退していきましたが、その中で、
例外的に業績を伸ばした、というか、伸ばし続けている企業、サンウェル様をご紹介します。
現在アパレル製品の98%以上が輸入品になり、国内の生産は厳しい現実に直面しています。
テキスタイルコンバーター各社が在庫の圧縮を迫られ、受注分しか生産できず、それゆえ
納期、価格共、アパレル各社の対応が困難になっていく中、逆に自社企画の商品の在庫を
しっかり持ち、納期を短縮化し、生地オーダー後に不足が出た時のフォローもしっかりする、
といったテキスタイルコンバーターとして当然といえば当然の業務を積み重ねることに
よって業績を伸ばしてきた会社がサンウェル様です。わたし個人の感想としては今元気な
生地屋さんベスト3に入る会社だと思います。そしてその3社共、本社は関西です。やはり、
特に繊維の商売は大阪強いですね。
そんなサンウェルさん、2年前から「3Dモデリングサービス」を始めました。これは同社の
生地を3Dデータ化し、パソコンやスマホで生地や製品が見られるというサービスです。
現在アパレル企業では3Dモデリング、バーチャル試着の導入が始まっています。2Dの
製品パターンをパソコンで3D製品としてアバターに装着、物理的にサンプルを制作しなく
ても製品検討が可能になり、アパレルのコストカットと資源の無駄遣いの削減につながる
技術として注目されています。製品サンプルはファーストサンプルから仕様の変更があれば
そのサンプルは市場に出ることもなく処分対象としてその後日の目を見ることはありません。
それ以降も仕様に修正があればセカンドサンプルもサードサンプルもその運命は一緒です。
それに対し3Ⅾモデリングは丈、袖の長さ、細部のデザイン、等細かな修正がパソコン上で
修正可能で、修正サンプルを作らなくてもデザインの修正点の確認が可能なため、これを
企画会議にそのまま使用すればサンプル数の削減とリードタイムの減少につながることは
間違いありません。
サンウェル様の3Ⅾモデリングサービスはこういった3Dモデリングの仕様にに対応するもの
です。アバターの服にその生地を選べば、色、柄だけでなく、光沢、落ち、揺れ感、等々
様々な生地の情報を伝えてくれます。
アパレルはサンプル作成時にまず一着分の用尺の生地をオーダーします。これを業界用語で
「着分」といいます。その後修正がある度に一着々ずつ着分を追加し、最後に進行する全色の
サンプルを作ります。これは「各色サンプル」と呼ばれるものです。そして着分のオーダーも
その分追加になります。
アパレル各社は基本的に必ずシーズンごとの展示会を開き、そこでお客様の意見を聞き、
修正点をまとめ、受注を取ることで発注数量を決め、原材料をオーダーします。そこで修正が
あった場合はその各色サンプルも当然良品として日の目を見ることはありません。これらの
サンプルの無駄がアパレル産業の環境に対する厳しい評価になっている一因でもあります。
3Dモデリングの技術はこれらの無駄を少しでも少なくしていく点に貢献し、その意味で地球に
やさしい技術と言えます。アパレルの無駄の解消に役立つだけでなく、生地屋さんにしても
カットの手間と小口出荷の繰り返しという手のかかる作業の減少、その間の小口輸送の縮小に
よる運送業のエネルギーカットにつながる、等地球にやさしい点は枚挙にいとまがありません。
わたしも実際サンウェル様のブースで拝見し驚いたのですがアバターをかなりの運動量で
動かすことができ、まさに生地の落ち、ドレープ性が実際のサンプルが動いているように
見てとれるのにはびっくりしました。ではその写真を載せればすぐわかるじゃないか、
と言われると思いますが、何せ素人カメラマンのやることなのでお見せできる写真がない
のはご容赦ください。いつかは写真もうまく撮れるようになろうと思います。
その代わり授業として何回かサンウェル様に訪問させていただき、一度本校にもお招き
して講義をしていただきたいと考えています。会社訪問に関しては将来のデザイナー、
パタンナーを目指すコースの学生を優先して参加させ、それ以外にも将来のMD候補でも
あるビジネス科のみなさまもお連れできたらな、と思っています。
今後さらに発展していくであろう3Dモデリングの技術。それでは将来パタンナー職は
無くなるのでしょうか。答えはNOだと思います。着ごごち、触りごこち、暖かさ、涼しさ、
等服にはどうしても着て見て触ってみなければわからない点があまりにも多いからです。
これがこの業界の魅力であり難しさであり醍醐味だと思います。みなさんも今後服飾の
魅力に肩までどっぷり浸かっていきましょう。とは言っても地球環境を考えても無駄は
無駄で極力省いていくべきです。しかし省きすぎて良いものがなくなってしまう、これでは
SDGsとは呼べない、という話です。みなさんも無駄は極力省きながらクリエイティブな
造形に磨きをかけていきましょう。
冒頭の「ハレルヤ」という曲では信仰とそれを守ることが誘惑の多い現生ではいかに
難しいか、ということが歌われています。誘惑に負けて最後に絞り出した言葉が「ハレルヤ」、
というようなちょっと説教くさい曲ですが、私たちもSDGsの信仰だけにかたよると大切な
ものをなくしてしまうかもしれません。要は偏らず、慎重に、広い視野で、楽しさを忘れずに、
というようなことを言いたかったのですが少しはわかっていただけたでしょうか。
来週からはまた別の展示会情報をお伝えできればと思っています。
ではまた。
HANAZONO
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