〜就活室便り〜#20 川をさかのぼる
みなさんこんにちは。就活室のHANAZONOです。お正月も成人式もやっと過ぎ、そろそろ
落ち着いて日常に戻る頃でしょうか。年末からずっと続くイベントは楽しいものばかりです
が、やはり少し疲れますよね。私が以前OEM,ODMの仕事をしていた時は春節(旧正月)前
に諸々の仕事を終えねばならず(基本的にこの日から中国の工場は約一か月お休みになります)、
毎年結構緊張した時間を送っていました。今はそんな仕事をしていないので世間同様浮かれて
過ごせば良いので楽といえば楽なのですが今年は私事ですが来週3日間入院が決まっています。
やることは大したことないので(、といっても手術は手術なのですが)、あまり心配なことは
ないのですが、その3日間分の準備、等でやはり少し焦ります。入院中に静かに休みたいと
思います。
ファッション産業はその範囲が非常に広く、その立ち位置で企業の在り方も全く違ってしま
います。この広いファッション産業の領域はよく川の流れに例えられます。
みなさんが実際に目にする店頭や百貨店、ECサイト、等小売り、販売等の一番お客様に近い
ところは「川下」と呼ばれます。みなさんがファッション産業として一番意識しているところ
ですね。
その川下産業に商品を提供している企業があります。商品を企画、デザインし、材料を発注、
縫製工場で商品を生産、仕上げをした後各店頭に納品します。これらの企業は「アパレル」と
呼ばれ全ファッション産業の代名詞ともなっています。縫製工場等、関連産業を含めてこの
部分を「川中」と呼びます。
その川中に資材を提供している企業があります。糸、生地を生産し、染色整理後アパレルに
資材を納品します。原糸生産企業は巨大な装置産業であるのが普通で、織元やニッターは
大工場から家内制手工業レベルまで様々、染色整理も企業規模は様々です。素材別に産地も
分かれていることが多く、北陸では合繊中心、メーカーとしては東レ、帝人等の巨大企業が
中心となります。
綿、再生繊維等は浜松中心に日東紡、日清紡が有名ですね。毛織物は愛知県一宮付近(俗に
尾州産地と呼ばれています)の中小の会社が多く、それでも日本毛織(ニッケ)や深喜毛織
(カシミヤが有名です)といった有名企業もあります。
これらの繊維業界が俗に「川上」と呼ばれる領域です。ここはファッションというよりは
むしろ純粋に工業と言った方がむしろ正解かもしれませんが様々な糸のコンビネーション、
後加工の数々、あくなき風合いの追求、等やはりただの工業生産よりは「匠」という言葉が
一番しっくりくるような産業で、求めるのはあくまで「ハイ・タッチ」で「ハイテク」では
ありません。というわけでそのあくなき着心地、触り心地の追求はやはりファッション産業
の一環だからです。
そんな川上産業とアパレル各社を結ぶ企業群が存在します。川上各社の試織した生地の善し
悪しを判断し、良いものは本生産を依頼、そしてその素材の色、柄を決めるのもそれらの
企業群の仕事で、多くの生地は各色、各柄を自社で在庫として持ち、アパレルの急な発注
にも対応できるようにし、製品納期の縮小に貢献しています。それらの企業群は「テキスタ
イル・コンバーター」と呼ばれています。
今回デザイナー、パタンナーコースの学生を連れてお邪魔したのがテキスタイルコンバーター
の最大手の内の一社、株式会社サンウェル様です。訪問、見学の第一の目的は、製品サンプル
を作らずにその生地で作った製品のイメージが3Dで表現できる「3Dモデリング」という技術
の講習にあるのですが、今回それより注力したかったのは、テキスタイルコンバーターでの
実際の生地選びそのものです。
学生達も日暮里繊維街や各生地小売店へ訪問し、自分で生地を購入しています。ただ 生地
サンプルや生地のパターン帳から生地を選んだことはありませんし、ましてやその種類と
言ったら格段の差があります。現在サンウェル様で販売している生地(来期以降の企画の新商品
は含まれていません)が訳1000品番、そのうち定番と呼べる常時在庫を備蓄している商品が
400品番程になるということです。1品番で無地なら10~30色カラー展開があるとすると、その
莫大な量が想像つくでしょうか。実際にアパレルで企画担当のMD,デザイナーといった職業の
方はその中から生地を選択し、各アイテム毎にはめ込んでいきます。その判断の手助けになる
のが3D モデリング、等の新技術であり、あくまでも生地選びは見て、触って、振って、を繰り
返し、風合いを、落ちを、デザインとのマッチングを確かめる匠の作業の一つなのです。次世代
技術は講演会でも理解できるところがありますが、生地選びという匠の技は、口伝、というか
触伝とでも申しましょうか、いずれにしろ上司から部下へ、先輩から後輩へ、ひとつひとつ
風合いを確かめながらその判断基準を引き継いでいくほかないのです。そのテキスタイルコン
バーターでの生地選びを今回学生たちに体験してもらいました。
初めてのことに戸惑いながらも頭の中の絵型に合う生地を選んで行きます。
仲間同士でいろいろ意見を言い合いながら一つ一つの素材の触感、風合いを確かめつつピック
アップしていきます。
サンウェル様のご厚意により、選んだ生地のサンプル帳をその場で頂くことができました。
昨今ではOEM・ODMを担う商社が製品サンプルの形でアパレルに提案し、アパレルはその中から
自分のブランドに合う商品を選ぶだけ、半分セレクターのような状態になっている、と言ったら
言い過ぎかもしれませんが中らずと雖も遠からずだと思います。生地、製品の輸入率が上がっていく
事は諸所の事情を考慮した場合、ある程度しょうがないことだと思います。だからと言ってその風合い、
触感、着心地が人任せになっていく、それはもうファッション産業とは呼べません。あくまでも着て、
見て、触って、がファッションの基本であるべきです。WEB上のデザインが全てではありません。
学生たちに話を聞くと、将来自分のブランドを立ち上げたい、という話をよく聞きます。そのためには
市場分析、マーケット・インの発想は欠かせないものです。しかしそれがファッションである限り物作り
の基本を忘れてほしくないです。発想がどんどん顧客寄り(川下)に向かうのは当然のことです。実際の
生産、ということを考えたら少しだけでも川下から川中へ、川中から川上へ、と川をさかのぼってみて
ください。マーケットに裏切られることは少なからずあります。しかし身に着けた触感、その他の五感は
けっして裏切ることはありません。一歩でも二歩でも、ほんの少し川をさかのぼっただけでも全く違う
風景が見えてくると思います。今回の訪問で少しだけでも学生たちが川をさかのぼった実感を感じて
もらえたら、今回の訪問は大成功だと思います。こんな思いを理解していただき、多大なご支援をいた
だいたサンウェル様の中田部長には感謝の言葉もございません。
本当に、少しでも少しずつでもこの長い川の様々な地域を学生たちに紹介していけたらな、と思う気持ち
は止むことがありません。今後も色々な産業、企業を紹介していけたらな、と思います。次回の企業紹介
も楽しみにしていただけたらと思います。
ではまた。
HANAZONO
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
東京服飾専門学校 次回オープンカレッジの日程
1/19に開催予定です。
詳しくは下記よりご確認ください。
https://www.tfac.ac.jp/open_college/
【Web学校見学を随時受け付けています】
授業見学のご予約は下記URLから予約フォームでお受けしています。
https://www.tfac.ac.jp/学校見学予約カレンダー/
♦資料請求・学校見学・WebオープンカレッジがLINEで簡単に
申込ができるようになりました。
お友達追加お願いします♪♪
♡tfac Instagramフォローお願いします♡
@tfac__official
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★