坂内先生『interview』 | ファッション専門学校の東京服飾専門学校

坂内先生『interview』

坂内先生(テクニカル科常勤スタッフ)(B)× tpress(t)

04 (t):工業高校の繊維科を卒業後、(株)レナウンルック(現(株)ルック)で28年間、務められたそうですね。具体的にどのようなお仕事をされていたのですか?

(B):入社してすぐは、商品管理部門で専門店や百貨店に商品を出荷する仕事をしていましたが、2年ほどしたら希望により異動しまして。商品に使う素材の耐久性や物性の試験をしたり、協力工場へ指導に出向いたりと、技術的な面を担当するようになりました。あとは、縫製の研究ですね。

 

(t):縫製の研究というのは?

(B):通常、デザイナーがデザインして、パタンナーが型紙を作ったら、次に製品サンプルが作られるんですが、そのサンプルの出来上がりが悪かった場合に、原因を究明するんです。生地が悪かったのか、縫製がまずかったのか、パターンとの相性が悪かったのか…など、多方面から分析して、対策を提案していました。

 

(t):さまざまな知識が必要となりそうですね。

(B):そうですね。生地や縫製に関するものはもちろん、機械関係など幅広い知識が求められます。でも、異動した当初は分からないことだらけだったんですよ。僕は一気に覚えようと思うと気が滅入ってしまうので、「1日ひとつ新しいことを覚えて帰る」ことを心がけていました。だから、知識のひとつひとつは仕事を通じて身に付けていったものなんです。その後、東北地方の自社工場で生産ラインを任されたのですが、そのときにもその知識が役立ちましたね。加えて工場時代は、今まで自分が研究してきたことが本当に正しかったのか、その検証もできました。

 

(t):技術指導など、教育係のような立場もご経験されたとか。

(B):はい。東北地方の工場から東京に戻ってきまして、マニュアル作成や、工場を指導する立場の人間の教育を担当していました。教える立場ですので、各種セミナーや東京婦人子供服縫製工業組合の勉強会に参加するなどして、新しい技術を自分から吸収するようにしていましたね。あとは、工場に支払う賃金の目安にするため、洋服1着にかかる縫製時間を算出する…なんていう業務もしていました。最終的に、品質管理部門に行き、会社で販売する製品のクオリティチェックを担当することになって。それと並行して、海外生産も多かったので、中国に赴いて、技術指導や検査の指導もしていました。

 

03 (t):技術畑一筋で歩んでこられたんですね。ファッション業界にはさまざまな職種があると思うのですが、技術職を選ばれたのは?

(B):実は、在職中にデザインなどの企画職と技術職、どっちがいいかって聞かれたことがあったんです。それで、そのときは洋服作りのことをもっとよく知ってから、企画職に行ってもいいんじゃないかって考えたんですよ。ですから、技術職に就いたんですが…。気がつけば、ずっと技術職でここまで来た、という感じですね(笑)。

 

(t):技術職の魅力というと?

(B):やはり、美しい洋服が出来上がったのを見たとき! それに尽きます。

 

(t):逆に苦労した点はありますか?

(B):さまざまなポジションでの業務を経験しましたが、いつでも納期に追われていたことですね。だから、「いかに効率よく仕事を進められるか」というのを常に考えていました。手作業の工程を機械化するよう提案したり、自分で機器を考案したり…。それでも納期は迫ってくるので、いたちごっこなんですけどね(笑)。そんな中で決まりきった工程に従うんじゃなくて、新しいことを提案する。アパレルの現場ってそういう技術革新が日常茶飯事なんですが、僕は研究職だったから、とくにその傾向が強かったのかもしれません。

 

01 (t):そんな坂内先生が、学校の先生になろうと思ったきっかけは?

(B):(株)ルックでは毎年、新入社員の方が入社すると、技術研修を行うんです。僕も研修担当のひとりで。みなさん、専門学校で技術を学んでくるんですが、実際に仕事となるとどうしても技量が足りないんですよ。そこで、自分が学校に行ってそれを補える知識を教えることができれば、即戦力の人材を育成できるんじゃないかって考えたことがきっかけです。それに、最近では、企業も研修をするような時間も体力もなくなってきているので、より学校での授業が重要になってくると思って。

 

(t):実際にtfacで教壇に立って…いかがですか?

(B):もちろん企業で教えるのとは異なる点も多く、慣れるまでは苦労しましたが、tfacの学生は吸収が早くて成長も著しいので、とてもやりがいを感じています!

 

(t):ファッション業界を目指す人へアドバイスをお願いします。

(B):すごくシンプルなんですけど、自分で好きなことが見つかったのであれば、迷わず飛び込んでみたらってことを一番に伝えたいです。何の仕事をするにも、とにかく「好き」って気持ちは、大前提になくてはいけないと思っています。

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06  坂内邦男 先生

tfacテクニカルコース常勤スタッフ

(株)レナウンルック(現(株)ルック)生産管理技術
生産技術、製品品質管理やケアだけでなく生産機器や生産ライン設計などにも豊富な知識と経験をもち、教科書からだけでは学べないメーカーでの深い経験を生かした授業や新しい技術の指導は確かな実力によるもの。
2009年よりtfacの常勤スタッフとして教鞭を取る。